とーこー
竹森

銀色の糸に息を吹きかければ
アブラゼミの死骸の中から
大きな蜘蛛が這い出てきた
田んぼ特有の脚の長いやつ

名簿に名前を回収させにいく道の途中
生きのびた方のアブラゼミは 早くも
青空のダルさを振動に翻訳していた
畦道を飲み干した舌が 飽き足らず唾液を漏らすから
私 夏服の胸部をはためかせながら歩いていたの

(電柱はいいね
(汗をかかなくて

どこでもいいから 海が見たいな
停められた車のナンバープレートに書かれた地名で
駐車場が デタラメな日本地図みたいになっていて
前方で集団登校をしている小学生の五月蝿さすらも
心地良いものに思わせてくれるような さ

名簿に名前を回収させにいく道の途中
ふと立ち止まってしまった理由がアレだったから
鞄の中から教科書を取り出して
授業中に読む為の 海外の訳詩集を
今日は早めに 挟み込んでおいたんだよ

(電柱に犬が
(小便をかけている

もう二度と 戻ってこなくてもいいから
青空に心臓を 打ち上げてしまいたいな
今夜 君との線香花火で
火傷してしまわないように さ


自由詩 とーこー Copyright 竹森 2015-02-15 21:04:10
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