そして いくたび
木立 悟





川を境に
夜が半分しか明けない街から
人は次々に去っていった
半分の灯り 半分の雨
空には
鳴らない鈴がかがやいていた


何も無い朝が
星の跡を押しのけてゆく
乳白色の動きの紋が
人の望みを覆い隠す


治っては増える傷の明るさ
昼を跨ぐ無人の歩幅
空の二層 三層の笑み
垂れ下がり 風を咥え
たなびくもの


階段へ向かう廊下
褪せた壁を照らす陽
すぎる毎に白くなり
そこに居ぬものの影を映す


窓を斜めに擦りながら
暮れは再び暮れを巡る
記憶は常に苦しくまぶしく
急に近寄り 消えてゆく


そして 幾たびかの夜が来て
街は人の代わりに鈴であふれ
鳴らないものたちの奥の奥には
むらさきと緑 
朝 虹 傘
ひと粒の雨がかがやいていた
























自由詩 そして いくたび Copyright 木立 悟 2015-02-07 14:54:24
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