闘鶏
月形半分子




ふるさとの町から井戸水をくむ音がなくなって久しい
町にはじめから祭りなどなかったのだ
特に冬には。駅前の小路にも?

ふるさとの町から冬支度がなくなって久しい
町にははじめから燃えるような秋などなかったのだ
特に九月には。海の波が高まるだけ。

ふるさとの木立はいつからか裸になっていた
飾り気のない木々の枝は単調な線を空にむけ
酸でもふりまかない限り
彼ら彼女らは真っ直ぐにたっていられそうだ
線路のように。そう、迷子のいく線路。

ふるさとの町には父だけがいる。
最後に私に残されたものが痩せた闘鶏であるかのように。




自由詩 闘鶏 Copyright 月形半分子 2015-01-28 02:58:15
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