大鯰(オオナマズ)
とよよん

大鯰のヒゲから真っ直ぐに発射されたのは
水底まで届く幾許かの月光を
雫が石を穿つ星霜を
重ね
重ねて
蓄積された翔龍の光線

射抜かれた私は身動きができない
足元から氷の根が張り巡らされ虚空に宙吊りになった
キラキラと舞い散る星屑

大鯰はさらに視線を泳がせヒゲの先からたくさんの小魚の野原を広げさわさわと揺らす

湖底のライトアップショーの観客は総立ちでアンコールを

(僕は鮟鱇じゃないからね)

あなたと私は今年もよろしくと挨拶を交わし、大きな鈴のついた太い綱を
振って振って降ってくる凍てついた身体

大気圏突入で粉々に砕け散る肉体が赤い飛沫のプリズムで青いオーロラになる

悠々と空へ昇って行く翔龍の尾の軌跡が蛞蝓の這い跡のような輝きでテカる


自由詩 大鯰(オオナマズ) Copyright とよよん 2015-01-10 17:05:11
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