さそりろまんす      (群青)1月課題 「星」 に寄せて
芦沢 恵

昼間スタバで優と逢った

いや彼と友人の座る席の前を通りかかった が正しい

それまで もちろん何もなかった

中学の先輩


私は注文したサンドイッチを半分以上残していた

優が帰り際


「残しちゃ駄目だよ・・・・大きくなれないからね」


「だってさ 今日は美味しくないんだもん」


「そうか・・・」


私は多分 その時顔の筋肉がゆるんで

子供を見るように優を見つめていたんだ きっと


「携帯・・・交換しておこう」





その夜、仕事が終わったころ

優からメール

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

さっき海に出たら(さそり座)が観えたよ

(さそり座)はなかなか観えにくい

姫は探せるか?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

たぶん無理 天体嫌いだったから

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

仕方ない 俺が教えるから今から来る?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

今から? もう遅いし真っ暗

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

馬鹿だな 

真っ暗だから(さそり座)が観えるんじゃないか

来る?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

なら行く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




もちろん優は独り身じゃない


5分もしないうちに優はワゴンでやってきた 

私はその助手席に乗った


「海に直行」


「OK・・・・」


海まで10分・・・・・・・・・

防波堤に車を止めて その縁に二人で座った


「おお〜!・・・今日も(さそり座)くっきり観える」

「どれが(さそり)よ??」


優は右端の(さそり)の尻尾からまず観せようとしたらしく  

その位置を指差した


「コンタクト忘れた!!」

「何!・・・それじゃ観えないよ」

「どうしよう?」

「では・・・・・・」


と 優は自分のメガネをはずし 私に渡す


「わ〜! 綺麗・・・・・・」


でも それでは優に星がまるで観えないはず

仕方ないのでメガネを共有することにする

私が左目 優が右目のレンズから遠い(さそり座)を観る


優と私の頬は一体となる


「あれが尻尾でずーっと左に来ると胴体・・・・」


優と私の顔がメガネを中心に内側に向いてくる


気づかぬうちに

優の唇の端に私の同じ位置が触れた


(星の観察のためのやむなき接吻・・・)


そう考えることにする が 優の顔は突然内側に向き

私の唇に優の唇が軽く乗った感じがした  

そのまま静かに舌が絡んで

数秒・・・・・・


「今舌 入れたでしょ?」


私は小悪魔のような顔をしてほほ笑んでみたりする


「違うよ (さそり)が刺したんだよ 姫のアソコを・・・・・」

「いやらしい・・・・」


少しもイヤではない自分が優に伝わったと思いたい


「ねえ・・・どこが(さそり)のアソコ?」

「そんなの無いって〜の・・・」

「な〜んだ 無いんだアソコ・・・(さそり)のくせに不能 つまんない」


優とはその夜プラネタリウムのようなお部屋でずっと・・・


私も優も不能でない(さそり)になって


自由詩 さそりろまんす      (群青)1月課題 「星」 に寄せて Copyright 芦沢 恵 2015-01-02 03:05:48
notebook Home