少女の名前
梼瀬チカ

「少女の名前」

ちょんちょんと
ケンケンを
庭石でしている
突然かがみこむと
名も知らぬ花に
手を伸ばす
摘みゆかれる花
かわいそうなお花さん
お花はきっと痛いから
摘まないよ
もう
そうもう決して踏まない




海のない土地に生まれて
初めて海をみる
きれいな貝殻もっと集めたいから
無我夢中で拾う貝殻
「かわいいね。」
声の方を見ると
若いカップルが
女の子を見た
『お兄ちゃんたちいやらしい。』
睨み付けて
走り去った









遠くで聞こえるコオロギの声と
近くで聞こえるキリギリスの声と
家で鳴くスズムシの声と
「まるでオーケストラみたいだね。」
そういったら
おばあちゃんは座ったまま
本をひらいて
眠っていた




中庭にたくさん雪が積もって
朝起きて雪見障子を上げると
真白く光っていた
白い衣を着た木々
雪うさぎを作ってもらい
松葉の耳と
赤い南天の実の目をしたうさぎが
ぴょんと跳ねないと
泣いて
駄々をこねていた




 私


自由詩 少女の名前 Copyright 梼瀬チカ 2005-02-02 17:28:00
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