白杖の人
そらの珊瑚

どんなにおそろしいか
どんなにふあんか
まくらやみのなかで
ふみだす そのいっぽ

声をかけられなかった
ずっと昔
学校帰りの交差点で
その人は白杖を持って
信号待ちをしていた
声をかけたかった
もしよかったら何かお手伝いしましょうかと
腕を差し出したかったけれど
ありがた迷惑、とか
見えるからってなんだ上から目線で、とか
思われそうで
思考はぐるぐる回りまわって
結局自分が傷つきたくないだけで
なにも出来なかった
その人のあとから横断歩道を渡り、別れ
違う道を進み
いくじのない自分のことなど
私はすぐに忘れた

海の向こうから
朝陽が昇っても
永遠に光のこない日々を
過ごしているその人のことを
私はようやく思い出した
たったひとつの白杖だけを 
支えにして歩く
その人の勇気を
思い出している



自由詩 白杖の人 Copyright そらの珊瑚 2014-09-11 08:18:03
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