(浅水を弾く)
tomoaki.t


浅水を弾く
風が汚されたのどをあらう
聴覚のゆめは畸形の吐息
夜からは野放しの天使が



生まれたばかり生まれたままで鳥が燃えて、逃げた骨片の表面で水が啼いている。話し声を追いかけてカードの橋を跳ぶように水銀の川を。絵は二十二枚、それを十一の夜とみなし、一夜を除くべきか加えるべきか悩むうちに目前の海に炭酸の花が集った。息が喉から拡がる。丘には放し飼いの爪あとが夜ごと走っている。



九十九の浜を
生きたままプリンターの口からは
ぽろぽろとリングの石灰の滓
夜が仮にも夜ならば
結節をデネブとして波を口にふくむことで
「いいから」と言われた背中をみている



私は生物ではなく namamonoとして
装着した本や 海藻を
値引きしたまま歩いて
歌われれば雨に傷つき
切り開かれた体を
地面に縫いとめた



残骸の静寂は綿菓子をほおばった子の歩幅で、暗い重機の鉄塊に骨を抜かれた魚の亡骸と小声で話している。野から海底から、岩が生まれる音の印字をレコードした婚礼が繰り返し自壊している祈りを、星が砂浜を降下していく根が咲き乱れて、ひと息に裏返した空を夜の触覚から膿んだ泡が、波が冷たくて喉をあらった。




自由詩 (浅水を弾く) Copyright tomoaki.t 2014-09-08 21:36:10
notebook Home 戻る  過去 未来