「なにか言って」
鳴々門 零

彼は泣いた
わたしが書き上げた詩を読んで泣いた
ことばに泣いたのではない
すばらしさなど彼にはわからないから
詩の気持ちがわかるから泣いたのでもない

むしろわたしの気持ちがなかったと気づいたことで泣いた

ちがうだろうか?

これはわたしの勝手な思い過ごしかもしれない
詩を書き上げたことで少し天狗になっている
戒めとしよう

無数のことばの連なり 彼には文字でしかなかった

激しい感情の吐露 彼には気でも違えたとしか思えなかった

その詩のなかにわたしはいない
だから彼の詩を持つ手が震えていた
そっと肩に手をかけようとしたが
なにかがはじけるのを恐れた
苦しさが込み上げてきて
思わず声をかけた
どう?


自由詩 「なにか言って」 Copyright 鳴々門 零 2014-08-09 23:24:07
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