ロッベン
salco
今、ワールドカップに目を注いでいる
地球人の何パーセントが肯うだろうか
なるほど彼は年相応だと
四年前は四十二、三というところ
何と二十六だった
あり得んロッベン
ファン・ペルシーと同い年
スナイデルとも同い年
さわやか長谷部と同い年
スーパー福笑い片山被告の二つ下
ベッカム(引退済)よりも上に見え
バッジオ(引退経年済)と肩を並べて遜色なく
ジーコ(監督業)の体とすげ替えても違和感ないだろう
ジャパネットたかたの社長の方が若いと言えるほど
観戦の妻子が娘と孫に見えるほどだ
タトゥー流行りのサッカー界で
モンゴロイドに劣らぬ無地肌
モヒカンアレンジ賑わうピッチで
うっすら産毛のビリケンあたま
いや頭頂の尖りは骨モヒカンか
いや髪の毛自体がそぐわぬ男
オランダ波平ここにあり
どんな苦労をして来たのだ
二歳で新聞配達
五歳になると炭鉱で働き
七つの冬だけシンシナティで大工見習い(何故だろう)
十でとうとう一家は離散
十二の時には港湾労働、ついでにグレて夜は地回り
十四でやっとユース入りして裏稼業から足を洗った
そんな顔だ
そんな経歴かぶせてごめんね
しゃにむにボールを追いかける
競り負けないロッベンロッベン
時速三十七キロなのだと
齢 三十
あり得んロッベン
そんじょそこらの犬より速く
そんじょそこらの猫より遅い
こんな尺度で語れば俄然ビミョーな感じだが
人類けっこう鈍足なのだ
だから新幹線など造るわけだ
ウサイン・ボルトも三百メートルは走れない
だからリニア技術に浮かれちゃうわけ
ボールをキープのロッベンロッベン
誰にも渡さんオラんだオラんだ
ボールを奪いにしつこくロッベン
こっちに寄越せオラんだオラんだ
オラオラオラオラ〜
一路ゴールにブッ込んで行く
その御姿は
リーダーシップとキャプテンシーは別物なのだと
(主将はファン・ペルシーなのだ)
牽引力と統率力は別物なのだと教えてくれる
(両方メッシに担わせる愚はアルゼンチンの病だろう)
斬込み隊長つーよりキレキレ伍長
そんなゴリラ気いや男気溢れるザトペック走法を見せながら
フリーキックもコーナーキックもイケちゃう繊細力
(だから中田や本田を批判する愚の骨頂は日本のビョーキ)
その上スローインまで請負つちまふオフクロ気質
嗚呼それでも
そんな全霊のプレイスタイルを以てしても
全身の全容が無骨愚直の体現男
たといあの目が当然ながら蒙古襞を持たずとも
私には岩田八郎。とかがより相応しい
着流しと東映マークで健さん二代目を
いや、時は明治の舞台は小倉
アングロ無法松。と私は呼びたい
半纏腹掛・股引ぢか足袋コーデがこれほどハマる西洋人もまた居るまい
胴間声恫喝芸のミフネなんぞよりよほど
そんな男ロッベンが泣くのを見たい
そんな気もした
四年後は遠い
生涯一ロッベンを嬉し涙で飾ってやりたい
が私の悲願はドイツ優勝
カール・ハインツ・ルムメニゲ以来
ごめんねロッベン