白い子。
nao

経験という前向きな名前で片付けられてしまった、感情や疲労の延長が子宮の中で姿を持つ。相手ってゆうのは相手にならない程大きな「社会」や「世界」に見えても絶対的に人。人。人。意味を溢れさせていた広い世界が無意味になり、無視していていた周囲が意味を持ち、捨てて、捨てて、残った世界で、なんだか私の下腹は鬱陶しい程、重みを持っていたのです。

最近は、本当に命として生まれてくる子のために、真っ白で真っ白な空間を作りたいと思っている。私を、空白にしたい。と、嘆願している。私を、私の薄っぺらい人生を、泥々の形状にしてから、頭蓋骨の真直下から流し出したい。

もしも、己を甘やかして皮一枚残したら、可愛い可愛い私が見えて、深海魚にも、もうなれない。深海魚をやる私になる。深海魚をやる私の骨は、化石になっても私の人骨で、瞳は退化せずに黒黒しく潤い揺れる。深海魚もやらなくなった私であれば、体内の深紅色が度を越してしまって、何を孕んでいるかよく分からないでしょう。それは恐らく、血中まで「愛」や「経験」という類の言葉達が付属して、あらゆる事柄を匿っているから。

そんな血液を全身に巡らせている君らの、幻覚ならば四方八方から撮影済み。労働を始めて暫くしてから、君らは幻覚を破り、姿を持った。だから、私は、ざっくばらんに両手で丸めて焼いた。笑っている口から差し出したのは、楽しい夜の酒のつまみ。皆して、スナックになった君らを、私の秘めていた本音とかだと思って、毎度、毎度、喜んで食います。相手が人なら、人を使って片付ける。会話という塊が飛び交う時に自分の声も、自分の耳から入ってくるから聞こえる。最近知ったそれは当たり前の事なのでしょう。下腹から口先までの道のりはかなり遠く、私の場合は四半世紀。

君らの鬱陶しい重みに気付くようになってしまい、
そして、振舞える程に逞しくなってしまった。
だから、愛しく想っても、もう、慈しめない。
私は、空白から生まれた、君に会えるかも知れない。
恐らく、君は全身が真っ白いのだろう。
君は、この世に生まれた一番最初の日に、
恐らく、私に、「おはよう。」と言い放つのだろう。


自由詩 白い子。 Copyright nao 2014-07-14 08:06:22
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