抹茶アイスと滝
クローバー

見栄えが悪いから、と
売店は滝から離れたところへ移転したらしい
水滴は一滴でも目に見えて
だけど滝を一滴ずつに分けてみる人はいない
マイナスイオンの感じない香りよりも
ひんやりとした抹茶アイスが恋しい
わたしも落ちて落ちていくそうして
その滝壺の中で錐揉み状態に移行して
左手は冷静に慌てて脱出ボタンを探して
何も聞こえないことは静かなんじゃなくて
水音が頭の中に溢れて零れて隙間が無いこと
落ちてきたあなたたちはほとんどが暗く沈んで
それ以外のあなたたちが白い靄になって
周囲の苔の緑を手伝ったりしている
わたしもおちて砕けてきたのに
ひんやりとした抹茶アイスが恋しい
二度と同じ水滴は流れない
だけど滝は同じように流れているように見える
失ったことに気づかない
わたしの体は同じ場所にあるように見える
滝の水は冷たい
それは留まることを知らないから
砕けて浮いた白い靄のわたしが漂う
緊急事態は続いている
それに誰も気づかない
ひんやりとした抹茶アイスが恋しい
胸の中の悟られないアラームを
グリーンに染める抹茶アイスが恋しい。


自由詩 抹茶アイスと滝 Copyright クローバー 2014-07-13 08:46:20
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