潮(うしお)
芦沢 恵



波打ち際

ビー玉大 小ジャリ拾う

口にふくむ


「私 見張り番をしたのよ」


「何の? なぜ?」


「砂泥棒の・・・コロッケを買うお金欲しかったの」


「そうなの・・・」


あ!


目の前に

子供用の椅子に腰かけ

コロッケ買うため

ひたすら海風に吹かれ

麦わら帽かぶった若い顔の・・・


急いでビー玉大を吐き出す

真っ白になった

だめだ 耐えられない


それなのに

吐き出したビー玉大を急いで拾い

ふたたび口の中へ


「一緒に行こうね 遠いところへ
そう言ったら赤ん坊だったアナタが背中で泣いたの」


「そうなの・・・」


ビー玉大を飲み込んだ

ドロップを飲み込んだほどの抵抗

咽頭をスルリ


すべてがそれで

許されたと錯覚できた



(群青課題「水」に寄せて)









自由詩 潮(うしお) Copyright 芦沢 恵 2014-07-11 03:05:51
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