九まで数える
大覚アキラ

一番好きだったのは

二人のくちびるが
触れるか触れないかの瞬間

三回目に逢った時
予期せぬ打ち上げ花火に照らされて
アスファルトに映った影くっきりと

四月が来て
もう逢えないかもしれないって
そんなくだらない嘘つかれて泣いた
とんだエイプリルフール

五時になったら
ハイおしまい
そんな仕事に就いてたら
毎日おまえに会えるのにな
って冴えない口説き文句

六本木って
何回待ち合わせしても
ちゃんと会えたためしがない
向こうにチラリと東京タワー
あのてっぺんから
おまえの名前叫びたいよ

七ならべは嫌いだ
おまえはイジワルだから
出せるカードがあるのに
パス、パス、パス
これが戦略ってやつよ
なんて
単なるイジワルだろ

八階の踊り場から見下ろす
この眺めが好き
って言ってたおまえが好き
おまえと初めて出逢った
この八階の踊り場が好き
ここから見下ろす眺めが好き
っておまえが言ってた
この八階の踊り場が好き

九年ぶりに
おまえと旅したあの街に
出張で行ったんだ
あの時とは何もかも
変わってしまった街で
あの時と何ひとつ
変わらない気持ちを抱えて
野良犬みたいに歩き回る
おれがいたよ


自由詩 九まで数える Copyright 大覚アキラ 2005-01-22 21:33:45
notebook Home 戻る  過去 未来