砦希

かえりみちに口ずさむうたうたは
誰かに聴かれることもなく
よるの闇に葬られる

小指ですこし触れただけで
粉ごなににくだけてしまいそうな闇にさえ
取りに戻れない
臆病さばかりが
増長している

闇にうたが積もり
雪のように積もり
まだ溶けず
そこにある
ひろわれるのを
待っている

わたしは知っている
だれもひろいには来ないことを
だれもこの場所を知らない
来ようとしても
途中でかならず道に迷う
そういうふうに
できている

それはわたしの殻であり
あなたの殻でもある
そうした隔たりの中
私のうたは
生まれては消え
生まれては消え

闇に積もり
溶けることもなく
ひっそりと


自由詩Copyright 砦希 2014-06-04 21:07:49
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