蛍光コオロギ
うみこ

寒気の中で鳴いている
冷静さなんていらない
出会ったばかりの赤腹と
交わした話

暗い土の部屋
蛍のランプ
一夜限りの輝きは
蛍光色の陰影

爪のない手に触れている
毛の無い体に触れている

まるで小さな虫カゴに
閉じ込められたようだった

一夜外に出てみたら
満点の星空に
藍の塗料があふれて
私の背中を怪しげに彩った

交差点までの落葉樹に故郷の香りがあった

美しく舞うのなら
悲しみはそのそばにあるだろう


自由詩 蛍光コオロギ Copyright うみこ 2014-06-04 01:59:56
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