静かの海
砦希

今日の渋谷はいつも以上に渋谷的

スクランブル交差点は青とともに人の海となり
すすみたい方角にすすめない
いつだれに刺されてもおかしくない
ひととひととの距離
まるで心を許しあった恋人のような距離
を、上手に保ち
足を踏まれないように
すこしビクつきながら
歩くのです

お前はよそ者なんだと
言われているような気もする
どこにいても消えないこの疎外感と
そろそろ上手に付き合っています

静かな声で
お気に入りの歌を口ずさんだけれど
誰の耳にも入ることはない
地下鉄のホームの
電車が入ってくる瞬間と
おんなじ
風がないだけ

この喧騒こそが
最高の静寂だということ
静かの海に
身を投げた人々と
静寂のなか
今も息をしている



自由詩 静かの海 Copyright 砦希 2014-05-24 22:59:43
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