つばさがあったころ
砦希

つばさがあったころ
言葉を捨てるまえのおはなし

がりがりの背中に
綺麗とは言えないけれど
一対のつばさが生えていて
鉄塔に上り
飛べるかためしてみた

つばさは意思とは関係なくはばたき
わたしは空を飛んだ

羽根は少しずつ舞い散り
けれど少しも怖くなかった

雲を突き破り
太陽にあたためられ
鳥たちと微笑み合った

わたしは飛んでいる!
こんなにも高く
こんなにも自由に



気がつくと
わたしは鉄塔の下に横たわり
鳥たちの飛ぶのを見ていた

太陽は遠く
けれどとても幸せだった



自由詩 つばさがあったころ Copyright 砦希 2014-05-24 09:51:32
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