扉
アンドリュウ

    銀行のとびらをでると
    
    白亜紀の湿原だった

    羊歯植物が繁茂する中

    鋭い牙の恐竜と目が合った

    とっさにボクは出来たばかりのカードを取り出し

    限度額は30万と震える声で呟いた



    スーパーのとびらを出ると

    人だかりがしてた

    大きな十字架を背負ったキリストが

    ゴルゴダの丘へ続く道をヨロヨロと登っていた

    とっさにボクは駆け寄り

    買ったばかりのおーいお茶濃口を

    ひとくちだけ飲ませてあげた


    シネマコンプレックスのとびらを出ると

    ヒットラーユーゲントがたちまちボクを拘束した

    硝煙の燻ぶる街は瓦礫の山だった

    ワンピース!ナデシコ!キヨタケ!マオ!

    と必死の思いで連呼して釈放された


    玄関のとびらを入ると

    生まれたばかりのボクがいた

    ボクはボクを感慨深気に見つめた

    絶対守るべき10カ条を書いて枕もとに置いた

    がんばれよ!とボクは小さなボクに声をかけた

    勝手口のとびらを開け

    ボク自身を後にした


自由詩       扉 Copyright アンドリュウ 2014-05-23 17:45:20
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