月の涙
ヒヤシンス


奪われた事を知った夜は、窓辺に腰掛けて月を見ていた。
初めての恋で僕は嫉妬を覚えた。
奪っていったのは僕の親友だった。
よくある事だよ、と笑った月が恨めしかった。

何も知らなかったのは僕だけだった。
その日から親友は親友でなくなった。
君も知っていたの、僕は月に聞いた。
もちろん、黄色いため息と共に月は答えた。

僕は二つの喪失に心から泣いた。
一つは大好きだったあの娘への想いに。
もう一つは信頼していた友との別れに。

見上げると、月はいつもと変わらずそこに在った。
もう何も語りかけてはこなかった。
ただ、偶然見えた流星群が僕には月の流した涙の雫に見えた。


自由詩 月の涙 Copyright ヒヤシンス 2014-04-23 04:39:25
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