死に場所
山部 佳

死ぬ場所をどうするか
出稼ぎ組の私にとっては重大な問題である

私は、どこで死ぬのか…
高度に進んだ医学界では
見つけた患者をベッドの上以外で
死なせるようなことは許されない

秋に、老いた桜の大木が折れた
ビルの隙間の忘れられた地面に佇立して
春のたびに見事な花を咲かせ
その時だけは、衆目を集めた
その桜が
ビルの谷間を走り抜ける風に
身を任せて倒れた

桜が倒れかかったマンションから
住人の苦情に従って管理組合から申し入れがあった
倒れた桜は
間髪入れずやってきた造園屋の
非情なチェーンソーでばらばらに解体され
市の清掃工場に運び去られた
彼女は既に
二酸化炭素と水と少々の酸化マグネシウムになって
再びこの世界を構成しているだろう

最新の医療分析機器は
どんな些細な揺らぎも見逃さず
その度に医学者たちは
新しい病名をつけるのに四苦八苦する

自然に去っていくことが許されない
神から離れた結末が
とてつもない正義に成長する
私の死に場所は…


自由詩 死に場所 Copyright 山部 佳 2014-04-23 00:09:57
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