触発
寒雪

私に背中を見せたまま
茫然と立ち尽くしている人を
振り向かせたいから
静寂の悲しみを震わせるために
遠くまで聞こえるように
私は心を刻むのです


私の影に隠れてしまって
ひざを抱えて眠る人を
起こしてしまいたいから
黄昏の痛みを分かち合うために
晩鐘に耳を澄ませながら
私は苦しみを搾るのです


誰も
感情を閉じたままで
私の言葉が寸足らずで
誰のそばにも
寄り添うことが出来なくても
存在の重さを忘れないよう
私は文字を連ねるのです


孤独が
最後の友人なんだとしても


自由詩 触発 Copyright 寒雪 2014-03-29 22:47:13
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