ノーマルヒル
村田 活彦

斜面の彼方
架空の消失点に向かって
きみは加速する

ゴーグルに叩きつけては
後方へ飛び去る風が
喝采にも罵声にもきこえる
そのクレシェンドの頂点で

はるかに強く
心音をたたきつけ

きみは一本の矢になる


地上では
カメラクルーが色めきだつ
キャスターが叫ぶ
コーチはこぶしを握る

だがその瞬間
雲の果てにひらめいた空の色は
確かに
きみだけのものだ



自由詩 ノーマルヒル Copyright 村田 活彦 2014-02-20 13:55:53
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