水の冠
千波 一也


水に編まれた者たちは
銀の縛りを解きたく
銀の向こうの
金色を請う
その
或る種の隷属がもたらす
透明な階級

整い過ぎた軋轢を
整え切れぬまま
王冠は
かろうじて
霧の中に浮かび上がる
錆びることは許されず
朽ちることも許されず
悲しみの意を
問えぬ身として
悲しい者たちの
頭上に
座す

古びた時計が告げるのは
まったく褪せないものであり
まったく褪せたものでもあり
まったく生まれたばかりの
ものでもあるから
沈黙は花となる
描くに値する
花となる

水の法の下に
すべての差別は寛容され
同様に
撤廃を促されもする

水に編まれた者たちは
自らを省みるすべを
知り過ぎた挙句に
その
底辺ばかりを
見つめてしまう
それは
必ずしも
頂に
背くことではないけれど








自由詩 水の冠 Copyright 千波 一也 2014-02-12 11:51:01
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【水歌連珠】