書く動力 4
Dr.Jaco
苦しめば書き損ないも功績だと言わんがばかりに出してみた。残念っ。そんな保証は
無い。追って3つの関係は更に書き換えられていく。
シーツにできた日陰と日向の境目に潜む「言葉さん」は、10才を超え、やがて少し
ずつ文章を書くようになった私ばかりを饒舌にさせていった。「私を愛しているなら
それが側を通りがかっているオヤジにも分かるようにきちんと愛してね」と言うのだ。
踊らされているうちに、「言葉さん」の無理な要求を自分の中で勝手にエスカレート
させていく、という恋愛マンガの定石に陥りながら、私はキレた。相手が人間なら、
惚れた相手を包丁持って追い回すようなもの。「憎しみ」の他愛も無い根源。愛さな
かったら憎んだりしない。
でも愛を感じる前にキレた私は憎しみを書きなぐった。もう一度書くのもイヤだから、
また昔のものを出す。
グ グ
内 世 界 的 巡 る 巡 る 言 葉
┃
Sprash
┃
最後の血が糸を引いて粘ったが頭転げた
のは私に訪れ しめたと思った言葉の
かすらず過ってしまったのが惜しくて追った首の
回転が止まらなくて脂肪のよじれを
鉛筆でつっついたらはち切れた
支配を解かれた体はぴっちゃぴちゃ
やりかえす時が来たので
血を踏み鳴らして喜んで
その手で
妾にした言葉を抱え込んで
勝手に頭/ワタシの唇から詰め込んで
嫌味ね
┃
Siamese-twins
┃
と私の幻の頭が言った
のを私の幻の頭は聞いた
ああ
おお
とかって体は甘えの影に
体を擦り寄せてればいいのね
おい私/オマエ
知ってる言葉を上手に起き上がらせて存立
一緒に言葉の編曲したいけど死体 けど
体を離れ 体の離れた私と私/オマエ
あえぎ声とよがり声
遣り取りすることの隔絶
┃
Senseless
┃
頭の無い体は裸で街に踊る
からといってそこが街だからではない
女(私/ワレワレ好み)の脇腹が撫で
勝手に勃起しても気持ちよくない
気持ちいい筈の言葉は私/ワレワレだけど
幻の内壁を嘗めずり回っているだけだ
言葉が先走っているから附け狙うのね
私/ワレワレは妾言葉を追い回す
『仮に言葉を女と仮定してみよう───どうであろう』
『言葉は万人によって求められることを自ら欲し』
『ガバガバだぜ』
というエロ漫画のフキダシに妄想する。
言葉はこき使われて死んでしまう
例の落ちね
つまり妾言葉は日照りして
私/ワレワレを襲う
一度使った言葉は執念深い つきまとう
『さあ言葉はここにあり 絶世の美女だよ』
勃起する幻の中
私と私/オマエは逃げ回る
言葉は回っているだけだ
┃
Sample
┃
首に盛り上がった血餅の楕円球は
頭の形なのでよおし言葉を着せるぞ
そうだな
ゲジゲジ唇たらこ眼/マナコどんぐり眉毛
言葉は回っているだけの私だけ ど
私の頭になるったらなる
独り合点な言葉を吐きかければこびりつく
病気じゃないわ病気じゃないなないわないわ
ななななないわなーいわないわなないわわないわ─────って
┃
Suicide
┃
それの明白なる証拠というのも
恥ずかしいと私思うだから
パンツ頭にかぶる
体に言葉をうんと出して
すっきりうつろにかぶる
と体はもう用済みの妾で
奥へへっこめ
男だろうと女になって片思いね
消えた体を産み落とす体だからだ
言葉を真似る体だからだ
いちいち拾って投げ返し
言葉をねだってくる体が
勝手に言葉によがり始める体は
『抽象的言辞にエクスタシーを感じるんだ いい年をして』
別に大して要らない
┃
Sanctuary
┃
言葉は私の派生ではないか
なんて私の思い上がりね
回っている言葉を内から眺める空間
発声のない暗闇に拡散して
脱水槽の側面に押し付けられた私が
ここから出向こうとしている所で
流通すべき意志が
人の隙間に溜まった
ままでいる
文字の玉砕が望まれる
(1985年12月)
『 』内は引用 上から
ニーチェ 「善悪の彼岸」・岩波茂雄 「読書子に寄す」・映画 「天上桟敷の人々」・御厨さと美 「裂けた旅券」
単なる癇癪持ちとは思われたくはないので、再度の失敗を覚悟しつつ、もう少し具体
的に進めて行こう。三角関係を巡る愛と憎しみ・・・じゃなくって「3つの関係と反
復の動力」であった。
散文(批評随筆小説等)
書く動力 4
Copyright
Dr.Jaco
2005-01-14 00:01:55