エンデの亀
フユナ


ここにはなにもない



抗う声も ふりみだすてのひらもない

あるのはただ

うちを向いた優しい横顔だけになってしまった

ここには もうなにもない

あなたの黒々とした目のように



声をあげるということは

はたして どうすることなのだろう

前にあゆむというのは

どうすることだったろうか

少なくとも私が

遠い人をののしることではなく

この歌ごえを 咎められることではないはずだ

けれども

ここにはなにもない




カシオペイア

そしてモーラ

教えておくれ その背で

私たちの歩みは

あなたより遅いのではないか

私たちの声は

あなたよりひそやかなのではないか

それでも見るしかないのか

甲羅もまとわない私は

優しい横顔のなか

なにもなくなっていく ここを

あなたの事をはるかに 知りながら

ただ ひとりで


















自由詩 エンデの亀 Copyright フユナ 2013-12-06 22:47:08
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