月蝕
岡部淳太郎
神が不在の夜
その間隙をぬって
あくまでも地上的な硬い何かが
天上の淡い光を覆い隠す
その時
人びとの喉はゆっくりと絞められ
背徳の快楽に意味のない言葉が虚空にばらまかれる
昔日の絵の中で召喚された
隕石からの深い要請は却下され
新しい壊れやすい岩石を創出するために
人びとはおなじみの旅を再開する
曇り空の月曜日
恐ろしい永遠の始まり
それを高い窓から見つめる
一対の望遠鏡の眼差し
星は濡れながら次第にその光を弱めていき
宙を跳ねる者は這いつくばって混沌へと身を落とす
むしばまれた水の思いを
どこに投げれば良いのか
枠から外れた風の体力を
どこで消費すれば良いのか
僕の属性は残酷だ
何の報酬もなく
息を潜めて
次から次へと降って来る時間を
ひとつずつ丹念に殺してゆく
理由は訊かないでほしい
淋しいのだ
隠れていることが