twin
竜門勇気


泡沫詩人は泡沫として生涯を終えねばならない
泡と知って砕けるしか無い
積み重ねた人生のすべてを
噛み締めた苦渋を
水の泡と悟って笑うんだ

クソほどの価値もない!目眩ましの純情を殺せ!

僕と双子の誰かは
僕のしなかったことだけで出来ている
僕が出来なかったこと 知らなかったこと
しくじらなかった今を生きている
そんな存在があったとして

クソほどは価値のある!丈夫な不条理の奴隷だ!

猫のいる大通りを歩いて
猫のいない裏路地も歩く
永遠を知らないでいるってのは健康さ

人は一人では生きていけないから
一人で死ねるようにできている

道のある場所を選んで
ここまで来たのに
道がなくなったから
立ち止まるなんて変だ

人は誰かがいるから頑張れるんだ
誰もいない場所へ行く準備は始まってる

道がないから道を作るなんて
不自然だし妙だ
行きたいところがあるなら
道がないなんてことはないはずだ

人は一人では生きていけないけど
何人いたところで生きているだけで

生きるってことは平等だ
生きている存在以外にとっては

だからか
僕の双子は
僕の思わなかったことで出来ていて
僕が信じなかったことを信じていて
僕が生きているかわりに
彼は存在すらしていない

生も死も不平等も入れ替わった
ディストピアで笑える兄弟

僕が笑うかわりに
彼は紫外線を放射しながらサメに変わって
海すら自分で創って泳いで消える
僕とは逆の
泣くと笑うみたいな隣り合わせじゃなくって
本当の真逆の
もっと想像もつかない自分の裏側の
同じ日に生まれ
同じ時芽生えた何かが
全く逆の半分だけ自分の僕の

星空とプラネタリウムは対称で
小指と影は真逆で
逆側の僕が歩いた道は
僕には道と見えなくて

ハリボテは充実していて
嫌なやつは他人で
歩けてたはずの道は荒野で

クソほどの価値は裏返って

一人の死は全体の始まりで

価値は裏返って

絶望は絕望のまま

泡沫詩人は命をかけて
一つっきりの詩を書く

百も千も億も形を変えて
裏返った自分と
裏返ってない自分が平衝して
静かで熱のない爆発を
発狂する寸前まで
タイトルを付けて時間を空けて
一つの詩しか
持ち合わせていないから
それしか考える余分を持たないから

双子が自分と生きる時
死んでいる自分を知って
双子は自分ではないのに
奴は多分
生き物でも存在でもない

誰の心のなかにもある
泡沫詩人が
クソの価値を決めている

青い空だと笑う声が
ある日聞こえなくなる




自由詩 twin Copyright 竜門勇気 2013-11-09 04:50:27
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