季節、夏、咳
茜井ことは

目覚めればもう日の出
せみしぐれはまだ弱々しい

過眠の代償の
ぼやりと重い頭を引きずって
タオルケットを払いのけたなら
ひとつ、咳払い
空虚な部屋に広がる
わたしの粒子が

この部屋いっぱいに
あなたが満ちたなら
気怠い身体も軽くなるかな

この部屋いっぱいに
わたしが満ちるから
やわい心も硬直するのかな

ひとりでいるという現実と
向き合うように
もう一度、咳払い
さようならを言ってから
去っていく人の方がずっとすくない
だからわたしも
無言で再びまぶたをおろすの




自由詩 季節、夏、咳 Copyright 茜井ことは 2013-10-30 10:39:20
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