悠久かくれんぼとは何だったのか?
ゴースト(無月野青馬)

「僕」は
悠久の遊びを
悠久かくれんぼを追い駆けてきた
ボビーを、背後のケインを追い駆けて
“次”の
かくれんぼを防ごうとしてきた
「僕」のしてきた行為は
無意味だったのかも知れない
けれども
「僕」は
自分が見てきたことを何らかの形で纏めようと思った
それを見たことがキッカケで他の誰かに
これまでのことに気付いて欲しいと思ったんだ


『悠久かくれんぼとは何だったのか?』
誰かの視た幻覚だったのか
未来で流行っているゲームだったのか
想像界での出来事なのか
嘘に塗れたペーパーバックだったのか
妄信の成せた業か
失われた旧世紀の映像史がトレースされていないか


悠久かくれんぼのことを
書き出せば書き出す程
分からなくなる
注釈すればする程分からなくなる


「お前は親を知らない」という
文言が
いつしか脳裏に反響していて
「親を知らない」と
何者かに言われる度に
血反吐が込み上げて来た


後退の出来ない未知
未知の空間を行くように
寒がりながら
暑がりながら
悠久の遊びに
いつも
怯えていなければならないのは何故なのか


いつの間にか設定されていた遊びの
熱狂が醒めて
嫌気が差してしまうと
置き去りにされた気持ちになってしまって
苦しまなければならないのは何故なのか


私は
そんな苛立ちを晴らす為にも
こんな手記を記しているのかも知れない


目に見えないお前達は
永遠に終わらない遊びに興じていたいのか
逆に永遠の遊びで終わってしまっては嫌なのか
どちらなのか
お前達の本当に手に入れたいモノは何なのか
その試行錯誤が“かくれんぼ”となって現れているだけなのか
制御不能なのか
(まさか)
(何かに)
(挑戦しているとでもいうのか)


誰かを継いだつもりなのか
誰かに告げたいことなのか
本当にただ
正しく試行錯誤をしているだけなのだとしても
「僕」は
お前達を
必ずや
追い詰めてみせよう


「お前」には
我々を捕まえることは出来ない
「お前」は
棲み家に帰るべきだ
闘い馴れていないままにヒーローを気取るなら
「お前」は
一刻も早く
棲み家に帰るべきだ


帰るべき家は
「お前」には見えている筈だ
ほら、あの無人の施設だよ
あの無人の施設こそが
「お前」の揺り籠であり
「お前」の墓場なのだ
悠久を待つのだ
「お前」は
そこで
じっとして
見付かるまで待っているのだ


退屈なら
退屈しのぎに
空想でもしているのだ
「悠久かくれんぼ」と題した小説とも散文詩とも判別出来ない空想をしているのだ
その「拡散」と「何だったのか?」までも
考えておくのだ


それくらいの
自由は「お前」も持っている筈だ
それくらいの
愉しみがあれば
「お前」なら
悠久のかくれんぼを待てるだろう
エンドレスを待てるだろう?
そういうキャパシティの有る設定にしているのだから


「お前」が心配していた娘の父親が
「神隠しに遭った」と
娘と妻のことを
ひたすらに探しているが
「お前」なら
その事件の解決も待ててしまうだろう
「お前」には
我々を捕まえることは出来ないのだから
「お前」は
結果的に
我々の悠久からの遊びをそこで記録しているのだから
「お前」は優秀な記録員だ
ケインである「私」が
「お前」をそういう設定で悠久に繋げたのだから


空想を心ゆくまで愉しむがいい
自分自身の力では救えない命を見つめ続けるのだ
それが
「お前」の悠久なのだ


「お前」は非力を
自覚し続けなければならない
最低限
自覚していなければならないのだ
「お前」が本当は何に憧れていようとも
暑かろうが
寒かろうが
我々に挑戦していようが
「お前」は
自分の無力の積み重ねを
忘れてはいけない


悠久のかくれんぼは
1度終わる毎に
deleteされる設定になっている
「お前」はじっと
終わりを待っているのだ
悠久の歴史の裏に隠れ続けてきた<本質の親>の扇によって設定値がdeleteされた後には
新しい世界が立ち現れる
望みの叶う可能性も僅かにある
お前の心配していた娘の母親の信じていた歪な神様とやらが
力を発揮することも
ごく稀にあるだろう
「お前」は世界がどうなるのか
見つめ続けながら
空想を重ねていろ


親を知らないことの意味を
考えるのだ


時が流れ
星が流れても
悠久にかくれんぼは受け継がれ
子供の集団での最初の頭脳戦になり
集団の恐さを最初に学ぶ機会になり続ける
(そして)
(最後まで)
(見付けてもらえなかった)
(子供は)
(扇を持つ<本質の親>の子供にされてしまうのだ)
(ボビーもディンガルノも)
(3回見付からなかったことで)
(悠久を生きる)
(<本質の親>の)
(子供にされてしまったのだ)


かくれんぼは悠久
かくれんぼは悠久
かくれんぼは悠久なのだ


悠久から続くかくれんぼは
悠久のかくれんぼは
親の見えざる手を使用する機関でもある
<本質の親>は
かくれんぼの中にこそ潜んでいるようなものなのだ


潜んでいるのだ
人間を試しているのだ
「お前」を試しているのだ
森の中、「お前」の居た施設の中、違う星の学校の中、今の「お前」が暮らす家の中
遊びは
いつも
突然に
開始される
悠久から続くかくれんぼは
前触れ無く
開始されるものなのだ


(「私」も)
(三年前に参加した)
(「私」は)
(3回見付からなかった)
(ケインと呼ばれていた「私」は)
(“外”に出された後)
(<親>に逢い、見込まれ)
(<親>の子供になった)
(創作物の中でも)
(拓かれた場所でも)
(透明でいられる身体をも得た)
(その上)
(<親>から)
(悠久の一部を譲与され)
(遊びの一部を引き継ぐ幸運までも得てしまったのだ)


(仲間の中でいち早く透明になった「私」は)
(悠久の一部になり)
(悠久から続く)
(抗争を)
(引き継ぐ立場にもなった)


(悠久を引き継いだからには)
(「私」は引き受けたのだ)
(「私」は)
(始めた)
(「私」の同類達との)
(悠久に続く遊びを)
(悠久のかくれんぼを)
(「私」の代の開始を)
(<本質の親>に)
(宣言したのだ)


(恐れることはない)
(誰もが体験し得る事柄なのだから)
(誰もが知っている遊びなのだから)
(何も恐がることはない)
(子供にも出来る)
(愉しい)
(極上の)
(遊びなのだから)


(けれども)
(遊びは)
(奥深い)
(世界を)
(透明なものとして)
(透明な目で)
(認識出来る機会になる)
(認識させる機関になっていく)


(「私」は)
(「お前」と)
(永久に)
(かくれんぼを)
(していたいのだ)





自由詩 悠久かくれんぼとは何だったのか? Copyright ゴースト(無月野青馬) 2013-10-24 03:26:07
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