ヒアゼア
船田 仰

一気に見た物語に
夜中のわたしはすっぽりくるまります
にゃあんにゃあんと泣きたい気分
全身でなにかを目覚めさせたい気分
全身だけで終わりを見たい気分

お昼寝の途中で
いきなり体が震えるときがある。
それはきっと心のどっかが震えているので、ベッドは振動しなくて、
でも体のすみからすみまでにとてもとても黒い風が吹き込む音が、
する。
ぐおーぐおーと真っ黒な風が四方から、
とてもとても大事なものを、
とても、
非常に重くて時にあったかいものを、
忘れちゃったからかなあ。それとも、
ああ、ブラインドが宙ぶらりんな存在だ。

まばたきの途中でふと思いついて
目を閉じてしまったらもう目覚めたくない
赤ペンでしるしを書いて。
わたしが息をしているときに、
ばーん
と、しるしを書いてほしいんだ。
音やら色やら温度やら記号やら煙草やらカフェラテやらコートやら、
ごちゃごちゃのすました記憶のすみに
猫が一匹いて
にゃあん。みたいな雰囲気かもしだして
あいづち
雨がしとしと地面を浮かす。そしてはがれ落ちてしまうので、
わたし、きみと呼べる君が沢山ありすぎて
くちびるの下に
指をおく。
ねむる。
素敵な物語を知るのだった。
過去だった、

だらしなく開かれた夜を繰り返し語るけど
どうか
重たくしないように
雨ざらしの今日にいつもくるまれるように
ちからは
ない
空っぽを
持ってる




自由詩 ヒアゼア Copyright 船田 仰 2005-01-08 02:09:07
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