大阪駅までの
八男(はちおとこ)


電車の 私の後ろの座席で 

アイドルグループの カツーンの話に夢中になっている

二人組の女がいた  若い声で




むっちゃなんやねん

めっちゃあれやねん




一人の声は甲高く

品がない



しばし咳をする





カツーンのことをこれだけ知っているんだと

周囲の乗客にとどろかせようという 甲高い声が また




愛とは まるで 知っていることの多さとでも 言わんばかりに




ふと 脳裏に 甲高い声の 女の顔 表情が 浮かんだ


モンタージュ写真のように 確実にこんな顔だろうという


的を絞り込んで行き  そしてぴったりになった





電車から降りるときに  答え合わせすると


ドンピシャの 顔が そこにあった




今までの 人生経験を駆使して


自分にできることの 限界を見た気がした




けれど 私にとっては 最初で最後の



必殺技だった





駅のトイレで


闘いを終えた 男の顔をじっくり見た





隣で手を洗う男の顔のほうが イケていた






 









自由詩 大阪駅までの Copyright 八男(はちおとこ) 2013-09-30 23:22:38
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