時間を抱きしめる
ブルース瀬戸内

アンドロメダ銀河内であれ
たとえオメガ星雲内であれ
大都会の水を飲んでみれば
大都会の味が分かるのだと
大田舎の少年は思いました。

大田舎の飲み方を駆使して
大都会の水を飲み明かして
これが大都会かと勘違いし
これぞ大都会だと人に勧め
その人がまた他の人に勧め
そんなことが延々と続いて
大都会の味が語り継がれて
その味こそが味オブ味だと
秩序の頂点に君臨したって
結局それが何なのかなんて
誰も分かっていないのです。

大田舎の少年は皆と同じで
現実に妄想を搭載したまま
現実に塗り絵をかましたり
妄想で現実を連れまわして
妄想に太い輪郭を描いたり
決意を固めては崩し崩され
挙句の果てには疲れ果てて
そんな混沌から距離を置き
遠くに鎮座して威張ります

大田舎の少年は秋の夕方に
大都会で場違いに滑空する
トンボを見ては故郷を向き
空のにおいを思い出します。
トンボは何かをクンクンと
匂ってからすぐ飛びました。

空がオレンジに染まります。
空以外や現実や妄想だって
同じオレンジに染まります。
終わりのようなはじまりの
時間を少年は抱きしめます。


自由詩 時間を抱きしめる Copyright ブルース瀬戸内 2013-09-27 00:32:25
notebook Home 戻る  過去 未来