紅月

いくつもの季節が血を流したあとで
しだいにかたむいていく水面の
ひたむきさばかりを空白に浸して
そうして
ここに
たくさんの誤謬が積もったら
それはとてもうつくしいことだと
ひとは言うのでしょうか


街の関節に水は満ちて
そして、や
つまり、が氾濫するとき
わたしの手元にはなんの齟齬もなかった
あかるい傲慢が羽根をひろげていくというなら
あらゆる言葉にさよならを告げて
さよなら、という言葉にすらさよならを
告げたい、
(ね、だから
なにもいわずにどこかへ去れるということは
おたがいにとって
とてもうつくしいことだから
おたがい、という言葉も
作用しないほど遠いところへ
祈りを見捨てて過ぎ去ってください)


咲きみだれる許し
花ばなの錯誤
つめたい星の匂い
せかいのなかで凍えていく世界
あかるい吐瀉物
天使の稜線がながれては
ひかりの雨のなかで
ひとの胸からもれる比喩を
ちがう岸辺に流すわたしたちは、


わたしたちは
わたしを連れていかずに
街はひたすら含有を繰りかえす
やさしい暴力が言葉を拒んでも
責めることはできないのだから
うつくしいえいえんの季節の
そうして、や
それから、を
火にくべるわたしたちのそれから
が、
おとずれてもそれは
ひどくうつくしい誤謬だから


(だからどうか
なにもいわないで
そこから
遠くはなれて)


自由詩   Copyright 紅月 2013-08-02 05:23:30
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