民次郎 (仮)
民次郎

茶碗の酒に蛾が溺れている 
夜が明けて、車の音が激しく聞こえ出す肌寒い朝
痺れていたらしい昨夜と半生が襲ってくる
やれやれ今日も人生やら生活に眩しい光を当てなくてはならない
束の間の夢幻 夜と朝を繋ぐ大意を得て フレームを超えて
削られていく人の世界のさみしさよ
うるさい世の中 説教と内省 生活音 一生酔っていたい
夢中になるから面白く 醒めて虚しい
父母の顔と同世代の顔が浮かぶ 国や故郷が無くなる不安
病や狂気やみっともなさ
夜にインプットした情報が朝の生活音と共に胸やけする
病気や筋肉痛や二日酔いや季節や死別や生活や環境や法の整備や世論や
変化しても元に戻る目処がつくが朝の思考が戻る目処とメカニズムが不明で気持ち悪い
朝は仕事をするかしないかの二分法で 夜は非現実に思考する
自分の思考感情をメタに言語化するのが苦手かも
なんとも子供っぽく大仰な傲慢さで夜に居た
朝は卑小で震えて誰にも見つからないように居る
心の動きをよく追いかけよ 
食のように分析 空服は腑に落ちる 明晰が戻る 限界や必要や平均も知ってる
呼吸のように一貫して整える夢でも現実でも


鱗粉の波紋が残る
誰も何も嫌いさ 時々閃いて時々慄いて
無謬のアスファルト 同情しちゃってさ困ったね
九月の台風は夜明け前に何度も停電してしょうがないから外でてさ
煙草もねえし ずっと昔もこんな真っ暗を祖先も見たのかね 
覚えてる?遺伝子 
車場で失って過ぎ去って忘れちまって
車の埃っぽいシートを倒す 
一時もすれば尻尾の汚いリスが松や桜を渡る 
警戒心が強いのに好奇心はあるのだ
喧嘩を見ると怖くて止める 喧嘩が好き
言葉にしたかった私を馬鹿な潮風が凪いでる
虚実に慄いた私には波が答えのようだ 
私は慈悲のある選ばれた者です この門をくぐる人に
馬鹿に明るい倦怠な昼よ 暗雲が来て雷雨をくれ
なんかいつからかバランスわすれちまってた
誰も愛してない 愛す必要もないヒューマニスト
偏執狂の波を食らう
灰皿に落ちたヤモリ 嵐で居間に来たフナ虫

馬鹿な奇跡など起こるはずもなく 彼は眠ったままである

背伸びに車を降りると看板がある
半世紀前に覚死したのだ
 
なんとも世界は 
よくよく流流とその姿を続けている
暮れの曇り空から
睨んだ希望が枝を透かして目に入る
  


自由詩 民次郎 (仮) Copyright 民次郎 2013-07-10 01:07:41
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