水の季節
nonya


うすずみ色の
やわらかな蓋を
かぶせられた街で
こまやかな水に
しっとりと懐かれて
わたしの内側は
ほんのり熱を帯びる

うすずみ色の
やわらかな蓋の裏に
みっしり結露した水玉が
きまぐれに零れ落ちて
ときには遠慮がちに
ときには容赦なく
あてどない傘を叩く

水溜まりを蹴散らすタイヤと
ぼんやり膨らんだ公園の緑
Tシャツの袖の濡れた匂いを
追い越していく少しくぐもった笑い声

水の季節の真ん中を
歩く
歩く
歩く

僅かばかりの憂鬱を口ずさみながら
取るに足らない後悔をなびかせながら
薄っぺらな理由を掬い集めながら
行き場のない熱を抱き締めながら

水の季節の真ん中を
歩く
歩く
歩く
のは
嫌いじゃない




自由詩 水の季節 Copyright nonya 2013-06-22 11:24:31
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