Candy Says
Debby


いま、きみがつまずいた場所から
ずっと、とおいさきで
誰かがよこぎったあとなら、
言葉は、なにげなく
肩ぐちからほどけていく
雨降りが並んだ日に
三叉路で立ちどまったきみの
とりがおちる音を待ちつづけた
そんなに旧い話じゃない
とにかくいま、君はつまづいたんだ。

あまだれ、という言葉を
手から手へキャッチボールするうちに
厚い雲を通り抜けて
きみたちは落下した、男たち、女たちどもみな
口ぐせのことには気を配るんだ
君が思ったよりずっと、大事なこと
光は舞い落ちる
綿ぼこりみたいな気持ちだったので
どこへでも行けそうだったので。

いま、きみがつまづいたそのときから
ロケットは全部宇宙に向かってしまって
人びとは煮込んだ鶏肉のことも忘れちゃって
大好きなあの人はロングブーツを履いているから
空想の隙間でキーボードがかたかた鳴る
夕暮れの窓だ、湯気に曇っただいどころの
素敵な町だった、それからさきは
星が降るような夜だったけど
ロケットのことばかり考えていたので
もう、なにも思い出せない。

さいごの力をふりしぼったからすが
それでも飛び立てずに
落っこちたときのあの音
夕暮れの中で、不規則に繰り返す
きみたちはいつだって
ちょっとだけ旧いものが好きだった
誰もが飛び立てるとは限らない
彼女はつまづいた
ロングブーツは、彼女にはむいてなかった
夜になってもねぐらに帰らない
時間はとても大事なもの。

いま、きみがつまずいた場所から
ぼくの住む町までのことを
教えて欲しい
どこにもたどりつかなかった言葉たちの
ために語るとしたら
きみのほつれ糸にぶらさがった
とりたちのむくろが
一斉に羽ばたき始める
街は羽ばたきに満ちていた
まるで旧い冷蔵庫たちのなかで
暮らしているみたいだ
ぶうん、と繰り返す人々に
名前をつけていくきみは
今、つまづいた。


自由詩 Candy Says Copyright Debby 2013-06-13 23:20:42
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