空の波紋 
服部 剛

犬が一人きり、吼えている。  
見知らぬ国の 
誰も行ったことのない森の 
ごわごわ風に身を揺する 
名も無いみどりの木の下で 

その遠吼えは 
あまりに切なく 
心を貫き、刺すように 
真空のそらへ 
波紋を広げゆく―― 

  * 

その頃、都会の雑踏にまみれ 
無数の靴音の只中で 
立ち止まる、仕事に疲れた男は 
ビルとビルの間の青に 
ひと時、広がる 
空の波紋をみつけた 








自由詩 空の波紋  Copyright 服部 剛 2013-06-05 23:11:44
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