albus
紅月

先天の、

   /腕を牽く。勾配をくだる白日。
   現像されたばかりの陰翳、育つ造花。
   水禍。渦を巻くあかるい幽霊たちの麓にて、
   孵らずにはいられないあまたの埋火、


枝が延びる。翅が延びる。痙攣する玉繭から
漏れる石灰。凪いだ深淵の骨をひとつずつ抜
く。去勢された哺乳類のたてる波紋に、水脈
を游ぐ幼虫がいっせいに散っていく。痙攣す
るシナプスのさざめき。先天の喧騒からはぐ
れ凍えていく私秘のやわらかな首を絞めてく
ださい。誰もなにも言わなくなったあとで、
おびやかすための韻律は獣の形状を化石させ
ていく。途絶えた水際の森閑から重力はおと
ずれ、戯れあいながら圏層の弥終へと先走る
植物たちの皮膚を、隠匿の疼きから引き剥が
していく、引き剥がしていく、枝、翅、の、


あらゆる寓意は含有されていくというのに。
白線を踏む獣たちの水禍、
回転する複眼のモザイク、
いざなわれた皮膚は裏返されて、
勾配をくだる四肢の欠損のそばには、
陰翳と紛うほど永い白日が群生する、

                 (のを、ただ、


発芽。演奏。さつりくの、腕を牽く。
回転する。交合する。指の痙攣。
あらゆる、おめでとう、の、りんかく、から、
モザイクの、寓意を、欠く、繭が、

(おびやかされて、)



先天の翅、
枝分かれする水脈は、
紡がれていくたびにはぐれ、
寄り添うわざわいは、
森閑という森のなかに灯りながら、
あかく開花したさいわいを指折り数える、
去勢された哺乳類が呑みこんだ寓意、
幽霊。脚韻が、枝分かれする、
孵さずにはいられないあまたの埋火、

   /腕を牽く。勾配をくだる骨の欠損。
   抜け殻のような躰の渦中で、
   赤紙が燃えている、萌えている、
   育つ造花。ひとりでに演奏されていく深淵の、
   私秘から、漏れる、あらゆる線、
   が、牽かれ、


          平行する、


              (のを。ただ。
 
 
 
 
 
 


自由詩 albus Copyright 紅月 2013-04-06 02:06:38
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