不眠症
花形新次

二時半は、二時半で、いつだって
ロッキングチェアの揺れない時刻だ
海辺の街でもないのに
波の音が聴こえるのは
朽ち果てた夢のせいか
それとも途切れ途切れの記憶のせいか
家族の温もりが残るリビング
虚ろなフランス人形と笑い声
ワインとジャズとフットボール
互いが入り混じり
斜め方向に交錯する思考は
今度は沈黙の側に立って
傍観者を決め込んでいる
喉の奥に痞えた痕跡 
激しく咳き込んでも
吐き出すことのできない後悔
何故生まれて来たんだという問いかけは
今に始まったことではない
亡霊たちがじっと見ている
哀れんで祟ることも忘れ
亡霊たちがじっと見ている
眠れると言うことは
生きていると言うことだ
その意味では
俺はおまえたちの仲間かも知れない


自由詩 不眠症 Copyright 花形新次 2013-04-01 19:57:14
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