社会生活
ロクエヒロアキ

わたしのこころは
棘の生えた傾斜をころがりおちていき
わたしはそれを
追いかけねばならないはずなのだ
はやく
はやく
清い水が流れ
うつくしい花の咲き乱れる
ふかい谷の底に落っこちてしまうまえに
落としものですよ、と、
だれかが紳士的にひろいあげ
わたしに手垢をつけて差し出すまえに
にもかかわらず
一縷の光が
たったの一縷の光が
こんなにもうつくしく
わたしの目を焼き
錯乱?
というよりこれは
知恵比べ
熱情をおきざりにして
生きてなどゆけるものなのか?
それでも今日もわたしは
バターすらもぬらないで
焼き色のついていないトーストを食べて
生きてこれたものじゃないか?
なあ
なあ
動け
わたしの足
信じて
本能の海に頭から飛び込み
通念に取り囲まれて
退路をなくしてしまうことは
こわいだろ?
動け
はやく
はやく
はやく
動けと念じる
これは
いままさに
あそこを転がっている
わたしのこころ
ああ
はやく
はやく
はやく
その声が
聞こえなくなってしまうまえに
動け
さあ


自由詩 社会生活 Copyright ロクエヒロアキ 2013-03-26 00:50:40
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