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月乃助


流され

  流れつく


 波の略奪品がたどりつく海辺
Astoria
陽を受ける果てをしらぬ砂浜の
行き過ぎる 老夫婦のかたらい
町のちいさな回転木馬の解体


円環する幸せは、ありはしないという

漂流の旅らしきものが、終わり


 擦り切れた
セ‐ラ‐服のスカ‐トのすそを洗う、波を気にしながら
身を横たえ
もう、皺をよせる海の機嫌を心配せずにすむことになった日


 光にあふれ
ゴ‐ルデン・リトリ‐バ‐が駆けより、
僕の指先のにおいを かいだ


 数多な浮遊する瓦礫は、審判の筏のようだと
それに埋もれるように 海に誘われ うばわれた
夜毎 理由を問うては、
星のつぶやきを 闇に聞いた
ひざをかかえ 波のその意志にまかせ


 きっと、母は
いつものように コタツで僕の帰りを待っている
時のとまった部屋は、時計の音もやんだまま


 あの町で僕は、
ポケットにたくさんの夢らしきものをつめ
自販機にそれを 押し込めては、
あふれる清涼飲料水の甘さが、のどを落ちていくのを
楽しんでいた


あの町は、まだあるのかしら、


 神の子に
わずかな罪深き人のなせるすべは、
民族のすべてが、未来永劫の罰か
焼印をおされた 歴史にもにた


だれもが 理由をもとめ
答えをさがした 730日
自然の摂理などと、許しはしない人の 天にもとめる償い


疲れたものたちから
帰りのないものを、思い出のなかに埋葬しはじめた
それの、どこがいけないのですか、
死が、一律に均等を得ておとずれたことに
平等という 不条理をのみこむことなど
できはしないと


僕の眼窩に這いいる 小蟹は、
それが、かつて見た港の 漁村の景色をしるよしもない

痛い イタッ
犬が、僕の腕に牙をたてた 白骨化した
それはいつか、ソフトボ‐ルを投げた腕


老人の 犬を呼ぶ
するどい口笛の音


 水葬されたさきでは、だれも
死の衣を ぬぎすて
あらたな命をやどす
生きるものたちが、祈り続けるように
死者たちもまた 生きるものたちのために
幸せを 祈らずにはいられない


 母さん
いいえ、
行方不明などでは、ないのです
僕は、死してなおどこかで
生き続けているのですから


だから、、、、







自由詩 1/2668人 Copyright 月乃助 2013-03-25 19:41:13
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