「退屈が僕を殺す」
ベンジャミン

 単純なことほど難しく
 複雑なことは解らない


無器用なことを言い訳にしながら
いま退屈が僕を殺そうとする


出来ることと出来ないことの境目には
いつも壁があるから
仕方なく空を見上げるんだ


そうしているあいだにも
退屈が僕を殺そうとしている


落ちようのない深さからようやく這い上がり
まわりを見わたせば数しれぬ落とし穴がある


恐怖を言い訳にしながら
退屈が僕を殺そうとしている


扉一枚はさんだ向こう側を知らず
届かない手のひらの隙間から
希望のような光が溢れてきても


それはあまりにも眩しすぎるから
いま退屈が僕を殺そうとしている



 生きていることを自覚しながら
 生きることは難しい



退屈が僕を殺す
いまこうしているあいだにも
退屈が僕を殺している



 少しずつ生きるのと
 少しずつ死んでいくのは違う



僕は生きていることを自覚しながら
見上げた空に
言い訳にならない現実を探している

それはまだ自分が
少しずつ生きている側に
かろうじてしがみついているから



 僕は殺される
 自ら死を選ばないかぎり



そのために
足もとを見つめていた視線を
上へ上へと向かわせて

その空がいまにも泣き出しそうだったらと
そんな恐怖と向き合おうとするのだけれど


そういうときほど空は
悔しいほどきれいに見えてしまう
    


自由詩 「退屈が僕を殺す」 Copyright ベンジャミン 2013-03-13 01:12:55
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