幻影のバラード
あおば

            130305



名高い幻影城趾に佇んでは
古くさい携帯式の並四ラジオを鳴らしていた
城趾とは名ばかりの小高い丘は
松の疎林に囲まれて
がさごそと石ころを踏みしめて
ここがそこと言われるまでは
ここだとは気がつかない
電波の通りも良いようで
いくつかの基地局も設置され
騒がしい光景になったという
懐かしいラジオ塔も撤去され
手ぶらの時間をもてあます
お客様方はスマホを翳すだけの
見晴らしが好いだけの旧城趾の賑わいが
今の私には嘘のように思えるのです

そこもとはいずこから参られたのじゃ
律儀者の松風だけが問いかけて





初出 「あなたにパイを投げる人たち」の即興ゴルコンダ(仮)
  http://anapai.com/tanpatsu/goru/
タイトルは、クローバーさん。





自由詩 幻影のバラード Copyright あおば 2013-03-06 13:36:44
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