私的なレストラン
小川麻由美

涙して書く詩なんて
これからいくつもあるだろう
そう思いながら
ナポリタンを食べる私
食べながら涙が出てきた
何なのよ このシチュエーション
思わずケーキセットを追加

椅子の上の荷物は さっき買った絵画
欠けた部分を埋めるように
私は絵画を買った 渇望した行為
マチエールと色彩 どこともつかない場所

レストランに居る
カバーはアフリカの布で作ったカバー
とても可愛らしい
本はボードレールの『悪の華』
なんて似つかわしくない

パラパラと読んで行けば
いつの間にか読み終えるだろう
そんな本は家にたくさんある
特別な事ではない

『悪の華』をまだ読みたいが
病院のレストランを後にする
太陽が沈む寸前の
絶妙な空と地を走り
夜を迎える


自由詩 私的なレストラン Copyright 小川麻由美 2013-02-21 21:06:38
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