彩る夏の夜
にゃんしー

彩る夏の夜に僕は
大切なことを忘れそうになる

なんつーか……
やっちゃったあとの
やっちまった
感じ?

どこからかほのかに香る
線香花火の匂いは
壊れそう

だからってねえ
君まで
痛がらなくていいじゃん
泣かなくていいじゃん

このスコールが止んだら
遠くに行こうとしてる
ツバメ

近くに、いて?

むかしむかしある子どもが言いました
手に小鳥を握りしめて

「手の中の小鳥は生きているか死んでいるか」
って

生きてると答えたら
握りしめて殺せばいい
死んでると答えたらその瞬間
小鳥は空に羽ばたくってわけさ

賢者は答えました

「未来は君の手の中にあるよ」

て、何もないじゃん
ねえ、何もない
そっか……何も、ないんだ

彩る夏の夜に僕は
スイカを割ろうとしてる

彩る夏の夜に僕は
うっかりした振りをしてる

彩る夏の夜に僕は
大切なことを忘れそうになる

彩る夏の夜に僕は、
手を離す

詩人にとってテクストを外すという行為は
ボクサーがグローブを外す行為と同じだ

人間はナイフより切れる

だから、ほら

やさしくなろう


自由詩 彩る夏の夜 Copyright にゃんしー 2013-02-20 21:29:04
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