耳の欠けた神
yamadahifumi

  



透明な僕らは一体

どこへと行くのか

透明な彼らは一体

どこへと消えるのか



誰もが両手を出して

銅貨を求めている

だが、その顔は王のようで

しごく、威張り腐っている



今、君が顔を背けたものが

やがて、君を打ち倒すだろうと

王宮魔術師は告げる

だが、彼はすぐに磔にかかり

全てはなかった事に・・・



人々の自足した顔の裏側に

無限の穴ぼこがあって

時々、僕はそこを泳ぐんだ

何ものも身に着けていないから誰よりも自由なんだと

少しだけ信じながら



それでも、僕も少し寂しくなって

人恋しくなると、僕はすなわち

手近の誰かにメールを送り、電話をかける

・・・でも、それは僕の求めている人ではない



だから、僕は迷惑なやつ

おかげで僕は夜中に一人酒を飲む事しかできない人間になってしまった

誰のせいでもない 僕のせいだ・・・

そんな時・・・そして、そんな事をわざわざこうして

詩に書き写してしまう時、僕は

自分の内部に耳の欠けた神が見える事がある



そいつは老人のように何かをわめているが

僕の耳には決して聞こえない

でも、そいつが必死に何かを喋れば

それだけで僕の寂しさも紛れるんだ



そして夜は更けて

やがて雪が降り出す

雪は僕の上にも神の上にも

平等に降りかかるはずだ




自由詩 耳の欠けた神 Copyright yamadahifumi 2013-02-14 01:55:41
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