一つの波
まーつん

 砂の上を歩く

 右手には 打ち寄せる波
 後ろから 追いかけてくる太陽

 大きな神様が
 水平線に腰を下ろし
 風と光を使って 何かを洗っている


 穏やかな水音


 この世界が生まれ落ちて以来
 一つとして 同じ形の波は
 立たなかったのだと

 一つとして
 同じ形の運命は
 なかったのだ、と


 そんなことを 考えていた


 人の命もまた
 一つの波のようなもの
 時の向こうから歩み寄り

 波打ち際に立つ
 君の足元に 何かを届け


 そして 消えていくのだろう


 だが それは終わりではなく
 海の懐に 還るだけのこと


 また 新しい波となって
 君の前に 現れるのだろう、と










自由詩 一つの波 Copyright まーつん 2013-02-10 09:27:15
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