カトレアの魔法
レイヨウ





今日は
あるところではお祭りらしい

ぼーっと
記憶を乱雑に散撒いた部屋で
誰かさんを想う


このちっぽけなカードには
何千枚もの僕が眠る
ずっとそこに居座っている

だから言ったんだ
カメラは、写真は、嫌いだって
僕の言った通りになったじゃないか


こうして取り憑かれるのは
いつも僕だ
置いてけぼりなのも
いつも僕だ


生活音さえ響かないこの部屋で
僕の心臓だけが遠慮がちに音を立てる

だから言ったんだ
これ以上近づく必要はないって
ほら、また
僕の言った通りになったじゃないか


こうして離してくれないのは
いつも君だ
我が儘通すのも
いつも君だ


買わされた電子ピアノが
色もなく佇むこの部屋で
もうしばらく僕は生きてく

ほら、これも
僕の言った通りになったじゃないか


好き勝手に前を歩いたのは
いつも君だ
前見て歩けよって言ったのは
いつも僕だ
あなたを見て歩きたいって
いつも君は


僕は一緒に前を向いて歩きたかったんだ



床が冷えきったこの部屋で
僕は決めた
暖かくなったらすべてを捨てよう

歩き出すのが遅いのは
いつも僕だ







自由詩 カトレアの魔法 Copyright レイヨウ 2012-12-25 14:28:00
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