泡沫
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僕の思慕の根柢には
無表情な錯誤が無限に痛罵とともに在り
/それは泡沫のように浮かんでは消える幻想としてのみ
なにか極限の調和を保っているように思え

存在全体を震撼させ
存在全体を交響させ
新しい共同を模索するかのように思われるのだ

それは瓦礫から生じる黒曜石のように
無から生じ無へと退却する一聯の動作のようにも思え
それが逆にあらゆる時を交響させるのだ
ありとあらゆる方位に向けられたその伝播が
一つに紐解かれることを意味しているのかも知れない
実際それは無限に変節する一つの場所であり
心の奥深くに刻印された一つの記号なのだ









オキーフの骨盤のように
どこか空虚で儚い

想いの海


あなたはどこへ?

孤独な散歩の途中。
夜がまだ私を捉えないから。

夕闇の絶望感が消え
アイスクリームのような夕陽の余韻だけが残る

私は冷蔵庫をあけると
ブルーベリーのジャムを取り出す
硝子の皿に円形に並べたクラッカーに
慎重に
掬い取ったジャムを載せていく

窓の外で誰かが見ているような気がする
人間ではない
何かが

切迫感のない畏怖
獣のようだ

私は窓の外の闇を見つめ返す

無人の廃屋と廃屋の隙間から
遠くの公園の常夜灯が覗いている

無垢の瞳
誤算

まどろんだ夢の名残がまだ手のひらに残っている

硝子は半透明な鏡像
私を薄く反射する

今日の食事は
これだけでいい
ラマダーンのつもりではないけれど
食欲がないのだ

私は手紙を読み返していた
かつて愛していた人の
詩のような手紙

〈場所〉とはなんだろう?

時間も
空間も
いっしょに孕んだ

時空?
それよりも

もっと固定的でリアルな質感

それでいて曖昧な
記憶の保存庫でもある

あああの獣は貴方だったのだと
今気づく

霊獣

ゆらめく視界

古代を幻視した折口信夫のように

わたしは今かぎりなく過去へと向かう



それが未来へ行くことだから





自由詩 泡沫 Copyright empty 2012-11-10 23:24:21
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